中国史入門文献リスト
(渡邊理)
はじめに
 
 以下の文献は、中国史の入門用として理解しやすく、かつ比較的入手しやすいものを収集したものである。小生自身、参考文献として用いてきた一部である。中国語や漢籍の知識が乏しい素人の小生にとり、大いに重宝してきた文献である。また、以下のリストには小生にとり、思い出深い文献も少なくない。ささやかでも参考になれば、幸甚である。
 
リスト
 
 貝塚茂樹著『中国の歴史』上・中・下、岩波書店、1970年
 堀敏一著『中国通史 問題史としてみる』講談社、2000年
 天児慧・石原享一・朱建栄・辻康吾・菱田雅晴・村田雄二郎編『岩波現代中国事典』、岩波書店、1999年
 姫田光義・上原一慶・高橋孝助ほか著『中国近現代史』上・下、東京大学出版会、1982年
 薮内清著『中国の科学文明』岩波書店、1970年
 薮内清著『中国の数学』岩波書店、1974年
孫玄齢著、田畑佐和子訳『中国の音楽世界』岩波書店、1990年
 陳舜臣・阿辻哲次・NHK取材班ほか著『NHKスペシャル 故宮 至宝が語る中華五千年』全4巻、日本放送協会、1997年
 井上靖・西田龍雄・NHK取材班ほか著『NHK 大黄河』全5巻、日本放送協会、1987年
 陳舜臣・司馬遼太郎・NHK取材班ほか著『シルクロード 絲綢之路』全6巻、日本放送協会、1981年
 NHK「新シルクロード」プロジェクト編著『NHKスペシャル 新シルクロード』全5巻、日本放送協会、2006年
 川勝義雄著『魏晋南北朝』講談社、2003年
 増井経夫著『大清帝国』講談社、2002年
 貝塚茂樹著『古代中国 原始・殷周・春秋戦国』講談社、2000年
 愛宕松男・寺田隆信著『モンゴルと大明帝国』講談社、1998年
 布目潮?著『隋唐帝国』講談社、1997年
 西嶋定生著『秦漢帝国 古代中国帝国の興亡』講談社、1997年
 小島晋治・丸山松幸著『中国近現代史』岩波書店、1986年
 天児慧著『中華人民共和国史』岩波書店、1999年
 三田村泰助著『宦官 側近政治の構造』中央公論社、1963年
 宮崎市定著『科挙 中国の試験地獄』中央公論社、1963年
 来村多加史著『万里の長城 攻防三千年史』講談社、2003年
 井波律子著『破壊の女神』新書館、1996年
 井波律子著『三国志曼荼羅』岩波書店、2007年
 井波律子著『裏切り者の中国史』講談社、1997年
 宮崎市定著『隋の煬帝』中央公論社、1987年
 宮崎市定著『大唐帝国 中国の中世』中央公論社、1988年
 NHK取材班著『NHKスペシャル 始皇帝』日本放送協会、1994年
 守屋洋著『中国宰相列伝』社会思想社、1976年
 山崎純一訳編『物語史記』社会思想社、1973年
 王柯著『多民族国家』岩波書店、2005年
 ユン=チャン・ジョン=ハリデイ著、土屋京子訳『マオ』上・下、講談社、2005年
 竹内実著『毛沢東』岩波書店、1989年
 郭沫若著・岡崎俊夫訳『抗日戦回想録』中央公論社、1959年(中公文庫版は2001年初版)
 布目潮風著『中国喫茶文化史』岩波書店、2001年
 阿辻哲次著『漢字の文化史』筑摩書房、2007年
 銭存訓著・宇都木章・沢谷昭次・竹之内信子・廣瀬洋子訳『中国古代書籍史ー竹帛に書すー』法政大学出版局、1980年        
 尚秉和(しょう へいわ)著・秋田成明編訳『中国社会風俗史』平凡社、1969年
 
おわりに
 
 実際、文献リストを作成してみると、色々と反省させられる。まず、つくづく小生自身の不勉強ぶりである。もっと気の利いた文献やすばらしい文献があるだろうに、狭くて浅い読書をしてきたことをことを恥じ入るばかりである。今回は、漢字、文学、経済、中国思想、生活、事件、事物などといった細かい分類をしなかった。また、台湾関連や香港関連も、今回はリストからはずした。それぞれの分野だけでも膨大であり、別な機会に改めてまとめるべきであると考えたからである。それにしても中国は宇宙規模で広大かつ深淵である。今さらながら、それを改めて思い知った。それでも中国を全く理解できないほど複雑怪奇な存在であるとは考えない。日本においても中国とは人的、経済的、文化的など多岐にわたり幅広い交流が存在する。学問という範疇で中国を難しく考えるのみではなく、中国に対し、親しい隣人として気軽に理解したいと考える。そして、これからも小生自身は中国について学習し続けようと考える。
 余談ながら、『荘子』の[外篇]天道篇 第13の10に、桓公と輪扁(車の輪作りの扁さん)との書物についての意見交換がある。桓公が聖人の言葉を記した書物(『論語』を暗示)を読んでいたのに対し、輪扁は、実際に口では説明しきれないコツを説明できない同時代に現存しない人の言葉を読んだところで「古人の残りかす」を読むようなものと否定するくだりがある。書物を無批判に読むだけならともかく、小生はその時々で思索することで得られる知恵は馬鹿にできないと考えている。書物から得る知恵を軽視して、学ぶ努力を否定するのではなく、日々、地道に学習を継続するのが大切であると、今も愚考する。