中国と日本の味噌
 
 小生が中国人留学生を実家に招待した時、決まって次のような発言がある。「味噌汁をご馳走になれれば、十分です」。もちろん、基本的には手の込んだご馳走を求めないとする遠慮した旨の発言である。それに加えて、中国人は本当に日本の味噌汁を好む。
 中国人にとり、味噌汁は湯(タン)(スープ)の一種として受け入れやすい。冷めた食事を好まない中国人は、温かい味噌汁を非常に喜ぶ。しかも、味噌汁は日本を代表する家庭料理であり、土地柄や家庭によって多種多様である。実際、実家に招待した中国人は皆、母の味噌汁は一生忘れられないと、大いに喜んで下さった。中国の味噌は、日本のようにお湯にといて調理するという用途のものはかなり少なく、日本の味噌汁は美味しくて珍しい料理である。
 最近、札幌でガイドブック片手にラーメン店を訪れる中国系の方々の姿を目にすることがある。中国本土、台湾、香港、シンガポールをはじめする、東南アジア方面の華僑系を問わず、お目当ては味噌ラーメンである。麺料理と湯(タン)との融合であり、また、中華料理と日本料理との融合として捉えている。実際、味噌ラーメンは、独創性が高く、美味なので、非常に人気が高い。小生の経験であるが、学食等で中国人と一緒に食事する際、彼らはラーメンと言えば、必ずといっていいくらい味噌ラーメンを注文する。おかげで醤油ラーメンの盛んな地域で育ってきた小生も、味噌ラーメンのファンになったほどである。ちなみに、1998年江沢民主席とともに訪日した夫人は、札幌のホテルのルーム・サービスで、味噌ラーメンを美味しく食されたとのことである。
 一方、中国の味噌は、炸(?)醤面(麺)(ジャージャンメン)に代表されるように、味噌を油でいためる調理の用途が目立つ。中国の味噌は、火を通すことで香りがたち、豊かな味わいとなる。中国の味噌を味噌汁のように用いることは、ふさわしい調理法ではなさそうである。逆をいえば、日本の味噌を油でいためることは調理法としてはあまりふさわしくなさそうである。実をいえば、小生は、中国で食したようなジャージャンメンを日本では食したことがなく、今でも懐かしく中国を思い出す味の一つである。そして、中国に行ったときには、また、味わいたいと思っている。
 味噌一つ例にとっても、ところ変われば品変わるで、中国と日本では違いがある。お互いに交流を深め合うことで、相互理解を深めるとともに、食を通じて新たな文化を創造できるのではないかと、希望を抱く。