文章
            倉田 稔
  大学で40年来、学生の論文を読んでいて、
いろいろ気が付いた。文章がうまく書けない、
文章を書くのが嫌いだ、ということなどであ
る。
  これは、学校教育に原因がある。小・中
学校では、名文・美文、いい文章を書くよ
うに、指導している。それが彼らにとって
重しになっているのである。
  この指導法は間違いなのである。文章には
2種類あって、1つには、表現文といわれる、
名文、美文、芸術文などである。もうひとつ
は、伝達文であり、日常生活に用いられる普
通の文章であり、レポート、仕事文がこれに
該当する。
  前者の芸術文は、学校のレポートでは書
かないし、仕事でも使わない。実際に役立
つのは、後者の普通文である。だから、少な
くとも大多数の国民は、普通文を書くことを
身につける方がよい。学校では、そちらの書
き方を教えるべきなのである。
  芸術文を書く規則はない。だから、教える
ことができない。普通文を書くための規則は
ある。だから教えることができる。
  だがこの普通文の書き方を、文科省も、大学も、
あるいは日本社会全体でも、教えていないし、
開発もしていない。これは教育面で大きな欠損
である。だから私は、大学で学生を啓発し、拙書
『学生と社会人のための文章読本』(丘書房)を
書いたのである。そして現在なお、それを教え
続けている。